庭の片隅に鎖で繋がれて、一日の大半をひとりぼっちで過ごしている犬の姿を町中でよく見かけます。人が通る度に、少しでも自分にかまってもらえるのではないかという期待と、その反面、諦めにも似た表情をして退屈そうに寝そべっています。
しかし、人間に喜怒哀楽があるように、どうぶつたちにも喜びや悲しみなどの感情があります。少しでも多く飼い主に遊んでもらおうと、目の前で転がって甘えて見せたり、わざと拗ねて見せたり、全身を使って人間以上に豊かな感情表現をして、私たちに親愛の意を伝えようとします。そんな彼らの仕種を注意深く見ていると、彼らが愛すべき家族の一員であるということに気付くでしょう。

どうぶつたちと生涯幸せに暮らすためには、飼い主として守らなければならないルールがあります。伝染病の予防や病気の治療などはもちろんのこと、自分が責任を持てる範囲以上の繁殖を望まない場合には、不妊手術などの処置を考えなくてはなりません。また、万が一逃げ出した場合すぐに連絡が取れるように、首輪に連絡先を書いたIDタグを付けることも忘れてはいけません。毎年何万頭もの飼い犬が、飼い主の元に帰ることができずに処分されているのです。
日本では、ペットショップやブリーダーなどから、何の審査もなく簡単にペットを購入することができますが、一度ペットを飼うということは、散歩や遊びの時間、スペースの確保、必要最低限の知識や医療費などの費用を負担する責任を、彼らの生涯に対して負うということなのです。

初めてシェルターに保護されて来たどうぶつたちの多くは、不安のあまりブルブル震えていたり、逆に牙を剥いて威嚇してきたり、あるいは、行き倒れになり瀕死の状態で助けられ運び込まれて来ます。「もう二度と人間なんて信じない」という目をしていた彼らが、スタッフの献身的な介護によって、少しずつ健康を取り戻し、心を開いてくれるようになります。最初は、人間の姿が見えれば小屋の中に隠れていた子が、リハビリによってシッポを振って近付いて来てくれるようになったときには本当に感激します。そんな彼らに新しい里親が見つかったときには、それまでのストーリーが去来し、嬉しさと寂しさと心配が入り交じった複雑な気持ちになります。しかしその時こそが、捨てられたどうぶつが一度失った人間との信頼関係を取り戻すためのセカンド・チャンスを得た瞬間なのです。